おすすめアルバム②『Parade』はこちら。
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- Sign "☮︎" The Times
- 密室ファンク
- ポップミュージックではなくもはやアートの領域だ。
- 常軌を逸した多作家の濃縮厳選アルバム
- ライブ映画『Sign "☮︎" The Times』
- 旅行記も書いてます。
プリンスを知らない貴方に聴いてほしいおすすめアルバム③
Sign "☮︎" The Times
( サイン・オブ・ザ・タイムス)
1987年に発表された2枚組アルバムです。
アメリカの名作アルバム100選とかで、『Purple Rain』と共に、ランキング常連の作品。
このアルバムをベストに選ぶファンも多い名作です。
アルバムジャケットの色彩イメージの通り、とても豊潤な作品です。
『Purple Rain』の妖艶さや『Parade』のようなストイックさではなく豊潤な感じ。
密室ファンク
とても多彩で豊かな表現力をもった作品なのですが、開放感がまったくないんです。
およそ、夏のドライブミュージックには向かないアルバムです。
なんか、地下室で音楽を聴いてる感じ。
もともと、プリンスの作品は開放感を感じるタイプのものではありませんでしたが、この作品は特にその傾向が顕著です。
前回、ご紹介した『Parade』の後、彼は自身が率いていたバンド”the Revolurion”を解散します。
解散の理由はいろいろ憶測されてますが、結局のところ、プリンス自身が目指す音楽とバンドメンバーの力量に乖離が出始めてたんだろうと思います。
その後、自分の創作意欲に忠実に従った結果できあがったのが、この『Sign "☮︎" The Times』。
バンドを解散し独りスタジオに閉じこもるようにして作った制作過程が作品全体の印象に影響を与えているのだと思います。
ポップミュージックではなくもはやアートの領域だ。
当時、こんな風に評論されていました。
商業的な成功を捨てて芸術性に走ってると・・・。
正直、りぜろうも初めて聴いてからしばらくの間、なかなかピンときませんでした。
『Purple Rain』でこれ以上ない商業的成功をおさめたプリンスは、彼がキャリアを通じて求め続けたものに大きく近づきます。
それは、”自分の創りたいものを創る自由”。
アーティストの誰もが求めるだろうこの自由。
もちろん完全ではないものの、商業的成功者としてその自由はかなり大きなものになったのだろうと思います。
そして、自分が創りたい音楽を創る自由を得たのと同時に、それを表現する才能をもつことを証明することになるのです。
『Purple Rain』の次作で同じ路線のものを発表すれば一定の成功が望めたにも関わらず、次作『Around the World in a Day』、『Parade』、『Sign "☮︎" The Times』とそれぞれまったく異なるテイストの作品を発表し続けました。
その結果、行きついたこの『Sign "☮︎" The Times』で、ポップミュージックとアートの境界線ギリギリの表現を実現します。
ポップミュージックとアートの境界線
あくまで創り手の表現ありきのアートに対して、ポップミュージックとして成立するには聴き手の存在が必要です。
誰も理解ができない作品は、アートとしては成立してもポップミュージックとしては成立のしようがありません。
この『Sign "☮︎" The Times』というアルバムは、一歩間違えたら誰も理解できないひとりよがりな音楽になりかねない危うさをはらみながらも、アーティスティックなのにポップというギリギリのバランスを維持することに成功しています。
ホントに一歩間違えたらナニコレ?ってなってた可能性もあるアルバムです。
このアルバムが名作とされる所以は、このギリギリの線をクリアしてるところにこそあるように思います。
常軌を逸した多作家の濃縮厳選アルバム
プリンスは常軌を逸した多作家でした。
この頃、プリンスは30歳目前。まだ20代にもかかわらず一生アルバムを出し続けることが出来るくらいの曲をもっているといっていました。
制御不能なほどの強い創作意欲から生み出された作品のほとんどは当然のことながら発表の場を与えられず既に数百曲の楽曲がストックされていたようです。
発表されることもなく山積みになっていく作品を前に、この時期プリンスはいくつものアルバムプロジェクトを進行させます。
しかし、あまりに早い周期のアルバム発売に対して、レコード会社は難色。
そんな状況の中で、レコード会社を納得させるためしぶしぶ曲数を絞り込んで発表されたのがこの『Sign "☮︎" The Times』です。
プリンス本人の本意ではなかったにせよこうした経緯で厳選された楽曲で構成されたこの作品は、当然な結果としてとてつもなく濃密なアルバムとして仕上がってます。
そう考えると、この作品は名作となるべくしてなった作品なのかもしれません。
ライブ映画『Sign "☮︎" The Times』
ヨーロッパで敢行された”Sign "☮︎" The Times”ツアー。
でも、これ厳密にいうとコンサートフィルムではなく、ライブ映画になるんです。
ツアー中、絶大な高評価を得たことに気をよくしたのか、プリンス殿下の衝動的わがままが発動(笑)
突然、映像として発表することを思いついて、録画機材の調達を命じたそうです。
しかし、当然のことながら、そんな急ごしらえで十分な映像記録が残せるはずもなく・・・
ほとんどの映像は、本国アメリカに戻ってから自身の自宅兼スタジオとなっている”Paisley Park Studio”のホール内で、再度収録しなおしたものが使用されてます。
ちょっと手順が複雑で、ツアー中に収録した実際の音源にあわせてあとからパフォーマンスの映像をあてて逆口パク的に制作されてます。
こんな経緯があるために純粋なコンサートフィルムではなくライブ映画として扱われてるんです。
ライブとしても映像としてもとても完成度の高い映像です。
どうしても聴いてほしい曲。
多彩な曲を一定のコンセプトのもとに統一感をもたせたこの作品はアルバムとして聴いてこそ真価がわかるので。是非アルバムで聴いてほしいです・・・。
心苦しいところもありますが、全17曲中いくつかをピックアップ。
Sign "☮︎" The Times
タイトルトラック。ホントに不思議な曲。
ほとんど、タイコとボーカルだけで成り立っているようなありえない曲です。
プリンスファンで知られるスガシカオさんが、この曲を理解するのに10年かかったっていってました。
まるで新聞記事のように現代社会が抱える問題を淡々と憂いた後、手遅れになる前に子供をつくろうと歌います。
Housequake
こんな曲、他では聴いたことありません。
似てる曲すら知らない・・・。
このアルバム『Sign "☮︎" The Times』はグラミー賞にノミネートされていましたが、U2のアルバムが選ばれ落選。
その時にコメントを求められたプリンスは「でも彼らにHousequakeをつくることは出来ないだろ?」と返しました。
プリンスの作品ががどれほどの独創性をもっているのか、プリンスが一番わかっていたんだと思います。
the Cross
1曲目の" Sign "☮︎" The Times"で現代を嘆いた彼は、このアルバムの後半に登場するこの”the Cross”で、たとえ今が暗闇でも泣かないで、神による救いがあるその時まであきらめないでと歌います。
まるで教会の説教のように静かに始まるこの曲、終盤に向けて激しいギターをともなって盛り上がっていきます。
未来への意思を感じさせる名曲。
If I Was Your GIrlfriend
もし僕が君の女友達だったら・・・って。
どんなに中のいいカップルでも男である以上、彼女の女子会トークに参加することはできませんよね?女子じゃないんだから(笑)
女性同士でしか共有できない世界。彼女を愛するあまり、自分が女友達になれたらその世界も共有できるのにって歌います。
過剰なまでの愛情表現・・・こういう歌詞表現、プリンスじゃなきゃできない世界観の表現です。
当時の恋人への思いを歌った曲といわれてます。
Sign "☮︎" The Times
是非、アルバム通して聴いてほしい名作です。
『Purple Rain』はこちら↓
『Parade』はこちら↓
旅行記も書いてます。